2013年9月28日土曜日

インポッシブル

インポッシブル
原題:The Impossible
製作年:2012年
製作国:スペイン・アメリカ合作
上映時間:114分
主演:ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー

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松竹 (2013-11-08)
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■粗筋
2004年のスマトラ島沖地震で、津波に襲われた家族の実話を映画化。



■感想
冒頭シーンは、家族がバカンスに向かう飛行機の中だ。そこで、留守にした家のセコムをオンにしたか、しきりに心配する夫。セコム?と驚いたが、日本に在住しているという設定だった。

この飛行機の中で、大事なシーンがある。

既に少年期に入っている長男ルーカスにとって、幼すぎる弟たちは邪魔なのだろう。ヘッドホンをして、自分の世界に入っている。隣の席の次男トマスは、兄に邪険にされて嫌だと母マリアの席まで来て訴える。マリアはルーカスの隣に行き、弟にもっと優しくしなさいと諭す。

少し歳の離れた兄弟なら、よくある事だ。しかし、このシーンは後の伏線になっている。


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マリアの家族が、タイのリゾートホテルに着いて、ほんの一日か二日ほど楽しんだ頃。突然、津波のシーンがやって来る。これは圧巻だ。

大きな災害や事故が起きると、それを想起させるようなドラマや映画を延期するという事がある。以前から、そんなのはバカバカしいと思っていた。しかし、この映画を観て少し考えが変った。

襲い掛かる水の塊、呑まれ、もがき、打ち付けられ、皮膚が裂ける。観ていて、痛みを皮膚に感じるほどだった。なるほど、この映画を日本で上映するには、やはり時期を選ぶ必要があっただろう。

それほど生々しい迫力があった津波シーンだが、しかしそれでも、あの震災の津波映像に較べたら恐怖は少ない。タイの津波がそうだったのか、あるいは敢えて描かなかったのか。もっとも、津波そのものは、この映画のテーマでは無い。


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家族五人がバラバラに流された後、マリアと長男ルーカスは濁流の中で互いを見つける。やがて水が引いた後の荒れ地を、二人は大きな木を目指して歩く。第二波、第三波を避ける為だ。

しかし、マリアは足に大きな怪我を負っていた。焦るルーカス。そこに、何処からか幼い子供の声がする。マリアは声の主を探そうとするが、ルーカスが止める。今は自分たちの事で精一杯だ、次の津波が来る前に早く木に登ろうと。それでもマリアは、声を頼りに一人の子供を助ける。

やがて三人は村人に助けられ、病院に運ばれる。マリアはかなり危ない状態で、ルーカスはそばに付きっきりだ。その時マリアは、自分は大丈夫だから、ここで誰か他の人の役に立ちなさいと言う。


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ルーカスは何をしていいか分からず、人で溢れた病院をうろつく。すると白人の大人が、写真を突き出して何やらまくし立てる。英語ではなかったが、子供を探していると分った。名前をメモして、呼びながら病院中を歩くルーカス。するとほかの人も自分の家族や子供を探して欲しいと頼んできた。

いっぱいになったメモの名前を呼びながら歩く。その途中で、マリアが助けた幼い子供が、親と再会して喜んでるところを目にする。さらに病院の人混みを歩くルーカス。そしてついに、メモの中の一人を見つける。

その時、ルーカスがとても嬉しそうな笑顔を見せる。飛行機の中でも、子供を助ける事に反対した時も、不機嫌そうだった彼が嬉しそうに笑う。


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ここで、この映画の主人公はルーカスだと思った。
二度見せた不機嫌な顔、二度見せた嬉しそうな顔。

母親は特別として、それ以外の人間、ましてや他人などには興味が無かったルーカス。自分の好きな音楽に浸るために、隣の弟を無視して何時間でも平気だったルーカス。泥の中に取り残された子供の声を聞いても、それを無視しようとしたルーカス。その頃の彼は、不機嫌な顔ばかりだった。

しかし、病院で次々と頼まれた人探しのメモを取る時のルーカス。やっと、たった一人だけれど見つけ出した時のルーカス。そして、あの助けた子供が父親と再会したところを見たルーカス。その時の彼は、本当に嬉しそうな笑顔だった。

シンガポールの病院に向かう飛行機の中で、母にその事を報告する。マリアは涙を溢れさせながら、ルーカスを誇りに思うと言って抱きしめる。このルーカスの、前半と後半のコントラストこそ、映画のテーマかもしれない。


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最後に、この映画のタイトル、「The Impossible」は、何を意味するのだろう? 直訳すれば、出来ないとか、無理、不可能などの意味だ。では、何が出来ないのだろう? 何が不可能なのだろう?

自然の脅威の前には何も出来ない、抗う事は不可能という意味か? それとも、こうした体験をした後、もう以前には戻れないという意味か?

どうも、いま一つ、このタイトルは分からない。











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